ハンガリーに赴任して丸9年を迎えようとしている。ハンガリーでゴルフが出来ると言う情報は持っていたが、ブダペストから約30分という好立地にこれほど雄大で四季折々の景色が素晴らしいコースがあるとは思っていなかった。コースの名前はパンノニアGCC。今年6月上旬迄にプレーした回数は251回、年間プレー回数の単純平均は28回となる。但し、メンバーになった2006年以降では年平均39回で、週一ゴルフで換算すれば9.5カ月相当になる。恥を晒すようで気が進まないが個人記録を紹介しておきたい。平均スコア:107.4、ベストスコア:96、ハーフベスト:45、パーとバーディーの総数は夫々312、18で、1ラウンド平均では1.24、0.07である。バーディーは14ラウンドで1回出る割合となる。因みに平均パット数は39.6である。また一緒にプレーさせて頂いた個人の数は99名に上る。
 こんな数字だけを並べても詰まらないので話題を変えよう。古い話であるが南ア駐在時代の経験である。若い世代の人はあまり知らないと思うが、南アのプロゴルファーNo.1と言えば、ゲーリー・プレーヤーであろう。彼はゴルフ界の帝王と呼ばれたジャック・ニクラウス、全盛期は新帝王と呼ばれ一昨年60歳にして全英オープンで最終日優勝争いを演じたトム・ワトソン、そしてつい最近亡くなったスペインのセベリアノ・バレステロス等と並び称され、ゴルフ界で一時代を彩った黒豹ゲーリー・プレーヤーである。G.プレーヤーは勿論、ニクラウスとバレスレロスも南アでプレーを見るチャンスがあった。ニクラウスのグリップまで頭を下げてパッティングする馴染みの姿、バックスピンを掛けてピン横にピタリと付けたプレーヤーのバンカーショット、バレステロスのエネルギッシュで躍動的なプレースタイルは今でも鮮明に記憶に残っている。
 ここで貴重な写真を紹介したい。一枚はG.プレーヤーと肩を組んで撮ってもらった超お宝写真。左が筆者で当時弱冠31歳、右は伊藤忠の駐在員。写真の上に直筆で「Best Wishes Gary Player」と書かれている。そしてもう一枚はG.プレーヤーCCのスコアカード。G.プレーヤーCCは名前の通りG.プレーヤーによる設計で戦略性に富んだチャレンジャブルなコースとなっている。スタンダードティーでパンノニアとヤーデージを比べてみたら、以下の様にほぼ同じである事が分った。

    アウト イン
パンノニアGCC Par 72 2987m 2987m 5969m
G.プレーヤーCC Par 72 2967m 2993m 5960m

 南アでも日本人会のゴルフコンペが年12回毎月開催されていた。年間を通して同じコースが使われていたが、上述G.プレーヤーCCが完成した1980年は、このコースで一度コンペが開催された。スコアカードに拠れば、1.5ラウンド回っており、結果は48、55、46。当時は現在の様に飛びや方向安定性を研究し尽くしたハイテククラブは無く、トラディショナルな柿の木(パーシモン)で作られたクラブを使っており、道具の割には良いスコアだったように思う。パターは現在パンノニアでも愛用しているあの黒塗りの錆ついた年代物である。
 日本人会月例杯のティーオフは合理的であった。スタート前のミーティングは無く事前に連絡される組合せ表で、各自がティーオフに合わせて三々五々集まり順番にスタートしていく。最後の組の者が長時間待つことは無い。参加者全員が顔を合わせるのはプレー終了後のミーティング/表彰式の時となる。南アは世界一日照時間の長い国であり、雨でプレーが出来ないと言う事はまず無い。乾季は約4ヵ月間全く雨が無く毎日快晴である。雨季でも夕方に短時間のシャワーが来るだけでさっと止む。1年52週ゴルフができると言う事である。駐在員の大半が住むヨハネスブルグは高度1800mで年間平均気温は17℃、極めて快適な国である(最近の事情は良く分からないが)。
 話をハンガリーに戻そう。月々の月例杯は日本人会、MSC杯共に参加者が多く過去にない盛り上がりを見せている。他にも4か国対抗、マッチプレー、年齢別対抗等、ゴルフ部としての思い入れとそれを定着させようと言う意思が根付き始めている。一昨年は60歳前後の者が集まりアラ還杯も実施された。部の代表者とそれを後押しする同好者で、時は今まさにゴルフ天国ハンガリーである。

 最後にハンガリーでの印象深い対戦を紹介して終わりとしたい。
 ゴルフの基本は個人競技である。中でもマッチプレーは最も気合が入るコンペティションではないだろうか。小生は何処かで大叩きするためストローク方式よりマッチの方が向いていると思っている。最も記憶に残っているのは、2007年のM氏との対戦である。5ホール残して4ダウン、勝負は決定的とお互い思っていた。しかしそれから奇跡が起こったのである。14番ロングで勝ち3ダウン、15番でも勝って2ダウン、勢いに乗って16番、次の池越え17番ショートでも勝って4連勝しイーブンに。そして18番はハンディーホール、同グロスで上がり遂に逆転1 UPで勝を納めた。流れが来たときのマッチは上品な清流では無く。何時止まるか分らない激流で表現される流れである事を体験した。
 今まさにゴルフシーズン真只中、心行くまで楽しみたいと思っている。
(たかはま・よしひろ 東洋シート)