ブダペストで生活を始めてから一年が経過しました。あっという間だったと感じる自分もいれば、決してそうではないと思う自分もいます。いずれにせよこの一年間は自分の人生で最も充実していたと言って間違いないと思います。
 ブダペストに来てから今年の夏のはじめまで、医学部で勉強するための準備をする予備コース(Pre-Med)生として学生生活を送っていました。生活面での文化的な違いに関しては予期していたほどの苦労はありませんでしたが、カレッジで勉強をしていく上では色々な苦労がありました。その一番の要因は、様々な国から来たクラスメートのほぼ全員が英語ペラペラだったことです。英語に関しては事前にアメリカで訓練し、日本でも英会話学校である程度の練習量をこなしていたため多少の自信はありましたが、ここで勉強をしに来たほぼ全員が当たり前のように英語を流暢に話し、英文をすらすらと読み、自然に聞き取れるという事実を目の当たりにした時、やはり自分には英語力が全然ないのだなと感じました。最初は本当にここでやっていけるのか不安に思う日々が暫く続きましたが、クラスメートと積極的に交流したりなど自分から行動を起こしてみることで英語の環境に徐々に適応できるようになり、また日本人の同期生や先輩方からも勉強面や生活面の相談など様々な場面で僕を支えていただき、そして最後は無事に大学入試も終えることができました。最後まで試行錯誤の日々が続きましたが、この一年間で出会った素晴らしい仲間との時間が自分を支えてくれたのだなと強く感じています。
 また、ブダペストに留学してからは親元を離れての生活であり、「家族に支えてくれていた」ということが何を意味するのかを日々実感しています。自炊生活が一つの例になるかと思います。毎日当たり前のように作ってくれたご飯も、ここでは自分で作らなければなりません。また日本とハンガリーでは一般常識が全然違い、ストレスに感じることもやはりあります。このように日本で過ごしていた時には気付かなかった「当たり前のこと」に気付くことができたことは、ここに来てからの一つの大きな収穫だと思います。
 一方ここで暮らしていてつくづく感じるのは、ハンガリーは居心地のよい場所だということです。治安も比較的良く、日本の大都会のような忙しい雰囲気も感じさせず、のんびりとした空気が漂います。ドナウ河沿いを夜に歩けば、鎖橋や王宮の丘をはじめとした歴史のある建物から暖かなイルミネーションを放ち、観光客だけでなくここで暮らしている人たちの心をも魅了します。王宮の丘から眺めるブダペストの夜景の美しさはまさに「ドナウの真珠」そのものです。決して便利な都市とは言えませんが、だからこそ感じ取れる温かみに気付き、感性がより豊かになるのを感じます。
 また、休みの期間を使ってのヨーロッパ旅行は本当に楽しい時間でした。この一年で様々な国の都市や町、村を訪れましたが、旅を通して国それぞれで違った人々の言語や人柄、料理といった文化を感じ、そしてこの世界の広さに気付かされました。これが経験できるのもハンガリーで留学しているからこそと言えるでしょう。
 このように、ハンガリーで留学すること自体がここでしか得ることのできないものをたくさん吸収できることを意味しており、そのなかで充実した日々を過ごすことができたと思います。今はセンメルワイス大学医学部の新1年生として新たなスタートを切ったばかりです。これから学ぶべきこと、経験すべきことがたくさんあると思います。そのなかでハンガリーでの留学生活を自分にとってどのように有意義なものにしていくかを考えつつ、ここで出逢った仲間たちと共に切磋琢磨していきたいと思います。また、留学を許してくれた家族をはじめ、支えていただいたすべての方への感謝の気持ちを忘れることなく、チャレンジ精神のもと自分の夢・目標に向かって一歩一歩前進していきたいと思います。