私はブダペストにあるコルビヌス大学で交換留学生として経済学を学んでいます。コルビヌス大学は、国内有数の名門大学として知られており、主に経済学に関して特化しています。ブダペストの中心部に位置し、中央市場とドナウ川に挟まれたコルビヌス大学を初めて自分の目で見たのは、昨年の夏、ハンガリーの地に降り立ったその日でした。綺麗にライトアップされ、ヨーロッパの雰囲気が溢れ出るその外観を見て、「私は1年間この大学で勉強することができるのか」と思うと、心が躍ったのを今でも覚えています。
 そんな私ですが、正直なところ、コルビヌス大学への留学が予てからの希望だったわけではありません。私が留学を意識し始めたのは、高校生の時でした。たまたま見たドキュメンタリー番組で、国連難民高等弁務官事務所に務める女性の存在を知ったからです。たった一人で途上国の村を取り仕切り、その地の経済発展に貢献する姿を見て、深く感銘を受けました。自分もこの女性のようなかっこいい人間になり、世界中の人と関わる仕事がしたいと思うようになりました。そのためにまず必要となるのは英語です。元々英語が好きだったというのもあり、いつかは英語圏に留学してみたいと思っていました。
 大学では、よりたくさんの時間英語に触れられ、同時に世界の現状を知れるように経済学部国際コースを専攻しました。大学3年の春、自分の将来を真剣に考えてみたとき、今留学しないと一生後悔すると思いました。やはりどうしても英語を話せるようになりたかったのです。そこからが猛勉強でした。それでも英語力は足らず、英語圏への留学は諦めざるを得ませんでした。そんな時、大変お世話になっている大学の先生から勧められたのがコルビヌス大学でした。東欧経済を勉強していたこともあり、チャレンジしてみた結果、合格し、ハンガリーへの留学が決まりました。

 コルビヌス大学には、海外からの留学生がたくさんいます。留学生は英語での授業を履修しますが、ハンガリー人は基本的にハンガリー語での授業を履修しています。もちろん私は英語で授業を受けています。その為、ハンガリー人と知り合える機会は多くありません。それでも、友達になったハンガリー人はみんなとても優しく、日常生活で何かトラブルが発生すると必ず助けてくれます。コルビヌス大学に通う留学生の英語のレベルは非常に高く、ついていくので精一杯です。
 初めは、授業で先生が言っていることの半分も分からず、毎回家に持ち帰り、理解できなかったことについて調べながら勉強し直していました。その為、レポートや試験勉強にかかる時間は他の学生の倍以上だったと思います。それでもなお、自分の英語力が成長しているようには思えませんでした。ハンガリーでの留学生活を始めて早くも半年が経とうとしています。これまでの5ヶ月半を振り返ると、早かったような長かったような自分でも不思議な感覚です。異国の地で初めての一人暮らし、英語での授業、英語での友達付き合い、膨大な量の宿題、全く分からないハンガリー語、全てが新鮮な一方、常に何かに追われ、焦りと不安を感じながらいつの間にか前期が終わろうとしていました。冬休みには、勉強から完全に離れてヨーロッパ周辺諸国を3週間に渡り旅行してきました。この旅行は、私にとってとても良いリフレッシュ期間だったと思います。ハンガリーとはまた違ったヨーロッパの雰囲気が味わえ、様々な人と出会い、人の優しさも醜さも知りました。
 一口にヨーロッパと言っても、国によって風景も人も違います。3週間経てブダペストに戻ってきた時、なんだかホームタウンに戻ったように感じました。それまで、ブダペストでの生活には慣れていたつもりではいたものの、なんとなく落ち着かない毎日を送っていたのに、一度出て再び戻ってきたとき、なんだかとても心が落ち着いたのです。「ここが今の私の居場所だ」そう思いました。そう思えるようになってから、生活面でも心境面でも私の留学生活は劇的に変化したと思います。
 自分が変わると、そこには今まで見えなかったたくさんの出会いがありました。冬休みの1ヶ月間、私はたくさんの人との出会いに恵まれ、たくさんの人と話をすることが出来ました。そしてそれらの出会いを経て、自分の殻を少し破れた気がします。その中で、まだまだ成長とは言えないですが、自分の英語力の伸びを感じることも出来ました。それにより、様々な面で以前よりも自分に自信が持てるようになったのです。「もっとたくさんの人と出会い、もっとたくさんの人と話をしてみたい」それが今の私の原動力です。その為に、自分の語学力を弊害にしたくありません。自分がもっと英語を話せるようになったら、人との会話をもっと楽しめるようになると思います。だから、怖がらずに今出来ることを精一杯頑張ろうと思います。

(えのもと・みずき)