【バラトン湖に近いLovas村で、こども国際乗馬合宿が開催されます。ハンガリーは知る人ぞ知る乗馬王国。これまで一度も馬の背に座ったことのない方も是非この機会にお試し下さい。】

 こんな情報を目にしたのは今年の6月の初め。もう、見たとたん「よっしゃー!」と思いました。

 ハンガリーで過ごす2度めの夏。近隣諸国への旅行ももちろん魅力的だけど、そっちばかりに目を向けていると、今住んでいるこの国のことは意外と知らないまま帰国・・・なんてことになりそうで、それってもったいないよねえ、どこか国内で楽しめる場所、しかも子どもも喜んでくれそうなところないかなぁ、などと思っていたところでした。
 早速こういうことには反応良さそうなご近所M家を誘ってみたら二つ返事でOK。日程の関係で、残念ながら我が家の夫のみ参加できませんでしたが、M家の家族5人+我が家3人の合計8人で申し込みました。
 案内には【こども国際乗馬合宿】となっていましたが、1週間コースの定員8人ぴったりだった私たちは、特別に親子ひっくるめて乗馬体験をさせてもらえることとなり・・・ラッキーなことに【夏休みファミリー乗馬合宿】に。

 ということで、今日はこの夏休みに参加した、“ハンガリー”がギュッと詰まった乗馬合宿をここで紹介させていただきます。

 ハンガリーの海(と言われる)バラトン湖にほど近いロバシュ(Lovas)村に、今回の乗馬合宿の舞台となる乗馬クラブはありました。
 私たち親子が宿泊していたヴェスプレーム(veszprém)のB&B(Bed and Breakfast:朝食付き民宿的宿泊施設)からこの乗馬クラブまでは車で20分ほど。公共のバスも通っていました。そして自家用車を持つM家が宿泊したのは乗馬クラブから車で約10分のCsopakという街にある一軒家。参加者のニーズに応じて宿泊場所も選べるのが魅力です。
 丘陵地からは遠くにバラトン湖が望める乗馬クラブ。まだ真新しい厩舎の横では作業員のおじさんがパンを焼くための釜を作っていました。将来的にはこの敷地内に宿泊施設も作りたい・・・とオーナーさんは言っているとか。何年か後にはこの乗馬クラブに隣接する宿泊施設を利用しながら毎日乗馬体験ができるようになるのかもしれません。

 さて、私たちが乗馬合宿に参加したのは8月10日(月)〜14日(金)までの5日間。
 5日間のコースは2つ。
午前も午後も馬に乗る「1日コース」と午前が乗馬レッスン、午後はフリーの「半日コース」。

 私たちが選んだのは「半日コース」。ほとんどが乗馬初心者だったことと、自然いっぱいの環境でいろいろな体験を・・・という思いもあっての選択でしたが、でもこれが大正解でした。
 例年にない猛暑となったこの夏の8月のど真ん中。
 この5日間も毎日、これでもか、というほどの暑さ。確か最高気温が31〜32℃くらいまで下がった最終日に「今日はちょっと過ごし易くてよかったですね」などと話したような記憶が。こんな暑さの中で日中ほとんど外にいて乗馬のレッスンをする「1日コース」は・・・想像しただけでめまいがします。もちろんもっと気候のいい時期には「1日コース」で短期上達を目指すのもいいかと思いますが。

 人が暑ければ馬も暑い。

 いつもは乗馬のレッスン時間が終わると広い草地でのんびり過ごす馬たちも、この暑さの中では大変ということで午後は厩舎の中で過ごさせてもらっていました。この「草地から厩舎へ馬たちを連れてくる」というお仕事も、子どもたちは率先してお手伝い。
 その他にも、乗馬レッスン前後のブラッシング、厩舎のそうじ、厩舎の床に敷く牧草集めなど、「馬に乗る」ことだけではない色々な体験もさせてもらいました。

 そして、メインの「乗馬レッスン」に関しては・・・

 もう、これは素人の私がどこまできちんと書けるかわからないのですが、とにかく他では考えられないくらいの恵まれたゴージャスな環境、待遇と言いましょうか。
 まず、子どもたちをメインに指導してくださっていたMarcs(i マルチ)さんが素晴らしかった! 自身も乗馬の大会への出場経験を持つ彼女は、すでにコーチ歴20年のベテランインストラクター。初めて馬に乗った子ども相手でも、その子の様子を見つつ「背中の上に立ってみる?」、「後ろ向きに座ってみようか」・・・などとちょっとびっくりするようなことを織り交ぜながらの指導。そして実際にいろんなことをやらせてくれる。指導を受けている子どもたちは、「あれれ?」と思っているうちに馬の背に立ったり、ペタンと寝そべったり、後ろ向きに座ったまま進んだり・・・いろんなことができちゃってる、という感覚の様子。1人30分程度レッスン時間はあっという間に過ぎてしまいます。

 初日は乗馬クラブ内で基礎的な乗り方を教わり、その翌日は、レッスン2日目にして外乗(がいじょう)体験。馬に乗って乗馬クラブの周辺をぐるっとお散歩。途中小さな川を渡ったりしながら平坦ではない道をゆっくり歩いて行くことは、馬の上でのバランス感覚を養う上でとっても大切なことだとか。こちらは「え?もうお散歩させてもらえるの?」くらいの気持ちで楽しんでいるのですが、これもまた意味のあるレッスン。
 3日目はレッスンの後に厩舎に敷き詰める干し草集めの作業をお手伝い。そしてみんなで厩舎そうじ。
 4日目は2度目の外乗レッスンの後に、陶磁器で有名なヘレンド村へ足を伸ばしてランチ、そしてヘレンド工場見学。さらに夕方はハンガリーの歴史の中でも重要な地位を保ち続けてきた宗教都市ヴェスプレーム(veszprém)の街を散策。これらは今回の乗馬合宿のコーディネータを務めてくださっている森田友子さんによる日本語の案内付き。
 そして5日目最終日には、わずか10歳でウェスタンスタイルの大会でヨーロッパ・チャンピオンになったというサラさん(この乗馬クラブのオーナーのお嬢さん、現在18歳)による「世界レベルの技のデモンストレーション」。“馬と一体になった姿”とはまさにこのこと・・・と言えるものを、そしてその姿で繰り広げられる美しい技を目の前で見せてもらうことが出来ました。

 そもそもこの乗馬クラブは、オーナーのシャンドールさんが、8歳から国際大会に出場し10歳でヨーロッパ・チャンピオンになったという娘さん(サラさん)のために作ったものだとか。そして、馬もインストラクターも馬の世話をする人たちも一流の人を揃えたのだとか。なんとも贅沢な話です。
 でも、確かにここにいた馬たちは毛並みの艶もよく、そしてなんと言っても穏やかな気質でお行儀が良い。広々とした恵まれた環境の中、オーナーさんはじめスタッフの皆さんの愛情に包まれながら、ストレスのない満ち足りた毎日を送ることができているのでしょう。
 そして「馬が大好き」というオーラいっぱいのインストラクターはじめスタッフの皆さん。
 「乗馬クラブを作って一儲けしよう」というのがスタートではないことが、素人目にもはっきり分かる環境でした。

 馬が好きで好きで、だから毎日のように乗馬クラブに遊びに(手伝いに?)来ていた近所に住む女の子ラティ。そんなラティにも優しく声掛けをしながら時には手伝いをお願いし、時には馬に乗せてあげていたスタッフたち。

 いいなぁ・・・この環境、この人間関係。

 そんなふうに思いながらあっという間に5日間は過ぎました。

 豪華なホテルや有名レストランでのグルメな食事はなかったけれど、ハンガリーらしい素朴さと味わい深さいっぱいの「夏休み」を体験することができたなあ・・・と、今、この5日間の写真を見ながらつくづく思います。
 さて、来年の夏休みはどこでなにをしようかな・・・
 我が家の娘は「来年も乗馬合宿に行きたい」と言っていますが(笑)

ハンガリー乗馬倶楽部 PREM 〜veszprem.exblog.jp〜 : http://veszprem.exblog.jp/i0

(ひらが・まきえ)