僕は今ハンガリー国立フランツリスト音楽院の修士課程で学んでいます。しかし、もうしばらくすると、僕のハンガリー留学が終わります。本当に充実していて、どの経験も忘れがたいものばかりです。僕が今まで生きてきた中で一番楽しかったです。この思い出や経験を今日みなさんに全てお話しさせて頂きます。
 まず、僕は小学生の頃からハンガリーリスト音楽院の名前を知ってからずっと留学に憧れていました。高校までは僕の周りに留学生はいなかったので、とても雲の上にいるような人々のように感じていました。リストの音楽が好きだったこと、本学のテレビ特集を視聴したこと、本学の受験が日本で受けることができたことが、志望の一番大きな理由だと思います。他にも留学先を考えていましたが、まさか本当にリスト音楽院の留学に結びつくことは考えてもいませんでした。素晴らしい世界各国の同期生に囲まれて、日々ハンガリーで勉強できたことはとても嬉しかったです。僕はもともと人見知りで内気な性格でした。ここまで僕を変えてくれた環境がハンガリーでした。
 実際に留学するとぶつかる壁ばかりでした。環境も感覚も文化も違うことに最初は悩まされていました。手続きがうまくいかないことや、コミュニケーションを全くとることができず、トラブルを数えてもキリがありません。自分自ら日本人のいない環境を作り、無茶なことをしてたくさん恥もかきました。しかし、他の留学生の迫力や恥をかいても折れない自信に驚かされました。生徒も先生と対等にコミュニケーションする場面が授業の日課と言っても過言ではありませんでした。僕はとにかくたくさん、可能なかぎり授業に行っていました。それぞれの授業から数多くのことを一つでも多く吸収したかったからです。ハンガリーダンスレッスン、企画マネージメント、美術史、音楽理論、英語とハンガリー語、室内楽、レッスンなどリスト音楽院のシステムは学生にとって有り難いものばかりでした。ほぼ学内のオーケストラや数々のコンサートに足を運びました。どのコンサートも素晴らしく世界的な名演奏も目の当たりにしました。勉強で必死にもがく学生にとっては嬉しいものばかりが溢れていました。室内楽をする喜びも味わって、留学するという醍醐味を全身で感じて本当にもっとも輝いていた3年間だったと思います。ハンガリーは音楽を学ぶ学生にとって史上最大の環境が本当に整っていると心から思いました。僕も陽気ながらにも真面目なこの国の虜になった一人です。是非全身でぶつかって思いっきり音楽や言葉でコミュニケーションをとって下さい。その先にある留学する本当の意味を体感して下さい。きっと今までにはなかった世界が開けてきます。
 この留学全ての経験が僕の財産です。今後は拠点を変えて、さらに日本と世界を結べるような音楽家になりたいと思います。またそこにも新しい経験や壁が待っていると思いワクワクしています。また、この自分の得た経験を元に人々を助けることができたらいいと思っています。皆さんありがとうございました。

(たにぐち・ゆうき)