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2011水球ワール ドリーグ アジア・オセアニア予選レポート
長沼 敦

 
 日本の水球は、今年「勝負の年」を 迎えています。1984年のロサンゼルス五輪以来遠ざかっている、オリンピックの舞台へ返り咲くため、2012年1月に開催されるロンドンオリンピック・ アジア予選を何としても勝ち抜かなければならないからです。現状の勢力では中国、カザフスタン、日本の3カ国で出場1枠を争うことになります。
  また、スポーツどころではない方々がたくさんいる今の日本で、自分達が水球をしている真価が問われているように感じます。野球やサッカーのようなメジャー スポーツではない水球が、日本の社会に存在する意義があるのか。日本の水球にとって、もちろん私個人にとっても、大きな意味のある一年になることでしょ う。
  そういった背景の中、今年はじめて迎えた国際大会はワールドリーグという大会のアジア・オセアニア予選です。オリンピック、世界選手権と並び、水球の国際 3大大会に挙げられている大会です。水球には、ヨーロッパ各国内で盛んに行われているプロリーグと、各国の代表チームが対戦する国際大会があります。プロ リーグは秋から初夏にかけて行われ、国際大会は夏の時期に開催されます。
  水球の国際大会で最も大きな大会は何といってもオリンピックです。どの国も4年に一度の大舞台へ向け、強化を推し進めています。各国内で盛んに行われてい るプロリーグは、スポーツ文化、地域活性、企業のコマーシャルなどの目的のほかに、国際大会へ向けた代表チームの強化という一面があります。ただ単純に人 を魅了するプロというだけではなく、強化や普及、地域貢献といった幅広く奥行きのある活動が、ヨーロッパのクラブスポーツの特色です。
  これをうまく取り入れたのが、日本のサッカーで、Jリーグが発足し、ここ数年、目覚ましい活躍を遂げています。日本の水球もこういった良い例に倣っていか なければなりません。
  話題が逸れてしまいましたが、今回私が出場してきたワールドリーグのアジア・オセアニア予選には中国、カザフスタン、オーストラリア、ニュージーランド、 そして日本の5カ国が出場しました。このうち上位2チームが6月にイタリアで開催されるファイナルラウンドの出場権を得ることが出来ます。また、ここで中 国、カザフスタンを撃破することで、1月の五輪予選へ向け大きく弾みをつけることも大きなテーマでした。
  この試合に出場するため、私はハンガリーリーグの終盤、数試合を欠場し、4月末日本へ帰国し、1日休養をとった後、すぐに日本代表チームの合宿に参加しま した。場所は私の母校である、日本体育大学の横浜、健志台キャンパス。国内で活動する社会人選手、学生の選手、国外に拠点を置く選手ら、所属はバラバラで すが、この「勝負の年」に懸ける日本のトップ選手が一同に集まり、限られた時間の中で、連携を深めていきました。
  1週間の合宿を終えた後、最初の試合会場であるニュージーランドのオークランドへ旅立ちました。この大会では全チームと2回ずつ戦います。1巡目がオーク ランド、2巡目はオーストラリアのシドニーにて行われます。結果は以下の通りです。
 
*オークランドラウンド
カザフスタン ○10?8
ニュージーランド ○17?3
中国 ×6?7
オーストラリア ×6?8

*シドニーラウンド
カザフスタン ○11?10
オーストラリア ×10?12
中国 ×6?8
ニュージーランド ○20?5
 
4勝4敗 3位

 
 残念です。悔しいです。結果が求められている中、チームの雰囲 気は良く、絶対に勝てると臨んだ中国戦。勝ちきることが出来ませんでした。確実にチーム力は上がってきています。あとは「勝つ」ということを学ばなければ なりません。
  ドングリの背比べに勝とうとするのではなく、応急処置で場を取り繕うとするのでもなく、「圧倒的に勝つ」というような確信を持って、勝負に臨む状態まで 持っていくことが今後の課題になります。
  これまでの経験から試合に勝つというときは、圧倒的に自信があるものです。不思議と負ける気がしない。その感覚が、一人だけでなくチーム全員がもてるよう になること、そうすれば勝つことが出来ます。
  ここ2年ほどは、代表メンバーの大きな変動はなく、チームの連係に深みが出て、戦術に幅が出て来ました。その戦術を広げるため新たな術を創ること、奥行き を持たせるため今の戦術を向上させること。深みが出て来た連係をさらに高めるため、基本的な体力や技術を研ぎ澄ませていく作業。オリンピック予選へ向け、 限られた時間で的を絞って、極めて質の高い練習をすることが、圧倒的な自信を生むことになります。
  そして技術的なこと、戦術的なことを万全にしたら、あとは精神の持ち方になります。これも日頃の練習、行動や言動で創り上げることが出来るものです。
  私は水球日本代表のロンドンオリンピック出場を本気で信じ、行動しています。客観的に現状を観たら厳しいのかもしれませんが、周りが何と言っても関係あり ません。自分を信じて夢を勝ち取りたいと思います。
 
(ながぬま・あつし)
 
 

Web editorial office in Donau 4 Seasons.