Topに戻る
 

 
 
 
     
 
 
 
水 球への挑戦
曲山 紫乃

 
  ハ ンガリーの水球
  私は、今、センテシュで水球をしています。
大学に入った頃、私は、卒業後は就職しようと考えていましたが、その気持ちはだんだん変わっていきました。毎年1度は行なわれる日本女子代表チームの試合 で負けることが続き、1勝することができなくなっていたからです。周囲には負け癖がついていると言われていました。勝ちたいのに勝てない。どうしたら勝て るのだろう。海外の水球はなぜ強いのだろう。海外の水球にとても興味がわくようになりました。
  日本にはプロチームはありません。大学卒業と共にほとんどの選手が引退してしまいます。残りの選手は、仕事をしながら練習時間、場所を見つけてなんとか続 けているというのが現状です。大学卒業後に続ける環境がないのも日本水球が発展しない原因のひとつでもあります。社会人は学生のようにしっかりとしたト レーニングができず、レベルアップどころか現状維持をするのも精一杯になってしまいます。それでは、世界で勝つことができないと思い、私は海外に挑戦しよ うと決意しました。
 多くの人に協力をしてもらい、海外のチームをあたってみましたが、日本の女子チームには実績も実力もないこともあり、なかなか行き先が決まりませんでし た。
  その中で、現在ハンガリー男子1部リーグ、エゲルで活躍している長沼敦さんにお話をしたところ、ハンガリーのチームを紹介していただきました。
  昨年の秋からハンガリーにきてSzentesi Vizilabda Klubに所属しています。センテシュはハンガリーの南部チョングラード郡にあり、人口は約3万1千人という小さな町で、日本人は私1人です。ガイドブッ クや地図にも載っていないような町ですが、水球、サッカー、空手などスポーツが盛んな街です。
  その中でも女子水球はタイトル獲得、オリンピック選手を輩出という実績があります。近年も常に国内の上位という強豪チームのひとつです。昨シーズンはハン ガリーカップで優勝、リーグ戦は準優勝、LENトロフィー(ヨーロッパクラブのカップ戦)でベスト4という結果でした。10月から始まった今シーズンは、 ハンガリーカップで準優勝。リーグ戦は4勝1引き分けで唯一負けなしのチームです。
  そのチームの中で私は小さい選手と言われています。身長が166センチある私は、日本チームの中では大きいほうなのですが、ここでは逆です。ほとんどの選 手は170センチ以上、大きい選手は、180センチ以上と男子並みの体格の選手もいます。激しいコンタクトプレーが多く、水着が破れてしまうこともある “水中の格闘技”水球は、体重制限がある競技ではないので手足も長く、体格のいいハンガリー人の中でプレーするのは困難です。
  昨シーズンは、あまりにもレベルの違う中で思ったようなプレーができず、自信をなくしてしまうこともありました。日本で入るシュートが、ハンガリーではな かなか入らない。相手につかまれて動けない。など、課題がたくさん見つかりました。しかし、世界のレベルを経験したことで、高い目標を設定することができ ました。今シーズンは、課題を自信に変えていけるように取り組んでいきたいと思います。

オリンピック
  日本で水球は競技人口も少ないマイナースポーツですが、男子は1900年第2回パリオリンピックから正式種目として採用され、球技としてはサッカーと共に 最も古いスポーツです。
  2012年のロンドンオリンピックのアジア地区予選が1月24日〜27日に、千葉国際総合水泳場で行なわれます。男子は中国、カザフスタン、クウェート、 香港、女子は中国、カザフスタン、香港と戦います。男女共にアジアのオリンピック出場枠は1つだけです。
男子が出場できれば1984年ロサンゼルスオリンピック以来28年ぶり8回目の出場となります。女子は2000年のシドニーオリンピックより正式種目と なっていますが、日本女子は今回、初めてオリンピック予選に出場します。
  オリンピック予選ということもあり、例年より合宿が行なわれてきました。私もこちらでの試合が終わり次第帰国し、チームに合流します。大会までの1ヶ月 間、短い期間しかありませんが、オリンピックの出場権を手に入れるために全力で取り組んでいくのみです。1番大きな壁である中国の女子チームは、2011 年世界水泳で準優勝、世界の女子水球界でもトップグループにいる強豪国です。大きな体でパワフルな中国を相手に、体が小さな私たちは1対1では、どうして も力負けしてしまいます。しかし、そこは、私たちの連携プレー、組織力で戦うしかありません。そこを1ヶ月でどこまで調整していけるかが鍵となります。
  日本で開催される国際試合。今の私たちを見てもらえる、知ってもらえるチャンスだと思っています。体が小さな私たちでも世界で戦うことができるということ をみてもらい、水球がしたい、水球を応援したいとより多くの人に思っていただきたいです。
  サッカーのなでしこジャパンのように明るいニュースを届けられるよう、そして、日本の女子水球を多くの人に知っていただけるように頑張りますので、是非応 援を宜しくお願い致します。

(まがりやま・しの)
 
 

Web editorial office in Donau 4 Seasons.