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大切な思い出
Závodni Vivien


 人には大切な思い出は一つはありますよね。その思い出は一瞬の出来事かもしれないし、1年間という長い時間で起きたことかもしれません。私の大切な思い出は日本に留学した時のことです。
 小さい頃からアニメが好きで、でもそれは日本のものだと知ったのは13歳の時でした。日本の文化や音楽、日本語の響きや漢字に魅了され、日本語科がある高校に入学し、いつか日本に行けたらいいなと夢を見ていました。
 その夢が叶いそうになったのは2011年、高校2年生の時でした。日本に留学することが決定し、福岡県に住んでいるホストファミリーと連絡をとり、出発予定日の3月14日をワクワクしながら待っていました。ただ、飛行機に乗るはずだった日に、私は学校にいました。
 2011年のもっとも大きな惨事といえば、なんといっても「東日本大震災」・「津波」・「福島原発事故」です。そんな大惨事の中、私が日本に留学することもできるかどうか分からなくなりました。むしろこんな大きな被害で、日本人がすごく大変な時期なのに、日本に行くことを望んでいいのか混乱し始めました。そんな時、ホストファミリーから手紙が届きました。住んでいる場所には影響がなく、私が来るのを待っていると書いてありました。その手紙を何度も何度も読んで、諦めてはいけないなと思いました。一方、止めた方がいいと説得する人もいました。複雑な気持ちのまま、新たな出発日が決まり、嬉しい反面、本当に行っていいのか、迷惑にならないのか、いろいろな不安をかかえて、4月28日に無事に出発することができました。16歳で初めて一人で飛行機に乗って、初めて一人で外国に足を踏み入れました。怖くはなかったが、こんな歳で、これから日本で過ごす8ヶ月間はどうなるのかドキドキしながら、日本へ到着しました。
 福岡空港で初めてホストファミリーと会った時、日本語も上手に話せないのに、なぜか何年も前から知っている人たちに会ったような、不思議な感覚に捉われたのを覚えています。兄1人しかいない私は初めて、お姉さんが1人と妹が2人できたことに嬉しい気持ちでいっぱいでした。お母さん、お父さん、3人姉妹と私。一緒に過ごした日々は私の大切な思い出になりました。いろいろなことを教えてくれたり、素敵なところに連れて行ってくれたり、お母さんが毎日おいしいご飯を作ってくれたり、つらい事も楽しい事も一緒に経験したり、本当に家族の一員にしてくれたみんなにどんなに感謝してもしきれないといつも思っています。
 日本にいる間はみんなと同じように制服を着て、同じ鞄を持って、学校に通いました。2階にある教室で私の席は窓側の一番後ろの席でした。クラスのみんなは優しい人ばかりで、瞬く間に友達もたくさんできました。学校に通い始めて間もなく、「自立と協働を学ぶ体験活動」という行事が阿蘇で行われ、クラスのみんなと集団行動を習ったり、阿蘇山に登ったり、山中で出会った牛たちに怯えながらみんなと一緒に騒いだりして、忘れられない数日になりました。
 阿蘇から帰って、毎年6月に行われる体育祭のために準備が始まりました。私は体育祭とはどんなものか全く知らなかったけど、全校生徒が赤・青・黄色と3つのブロックに分かれて対抗する行事と友達に教えてもらいました。体育祭でもっとも注目される競技は各ブロックの「パネル応援合戦」です。きれいに見せるために、2週間毎日練習しました。猛暑の中でも、雨の中でも練習は続けられ、先輩たちが私たちを笑わせてくれたり、励ましてくれたりしたおかげで毎日が楽しすぎました。
 最初、私たち1年生は大きな声を出すことも恥ずかしくて、パネルを上げるタイミングも何度も間違えたけど、練習を重ねるごとにどんどん上手になって、体育祭で優勝することもできました。あの感動を味わうことができてとても嬉しかったです。こんな素敵な行事ハンガリーにもあったらいいなと思いました。学校のグラウンドに設置されたスタンドは翌週に解体されるのを教室の窓から見て、寂しい気持ちになりました。体育祭前の2週間は学校内どこ行ってもみんなの声が聞こえたのに、終わったあとは何もなかったかのようにすごく静かになった学校は不思議でした。
 それから、留学生交流会や文化祭、クラスマッチ、楽しい行事はたくさんありました。部活は3つも入っていました。地学部では夜まで学校に残り、星空を双眼鏡で見たり、冬は星の村という所に合宿に行ったりして、地学の知識を深めることができました。書道部にも入って居ました。もともと字を書くことが好きだったので、ほめられた時とても嬉しかったです。大会にも出ました。毎日教室で遅くまで練習して、暗くなってから帰るという忙しい日々が何週間か続いていましたが、好きなことをやっているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。外国人が書道大会に出ることはないので、貴重な経験になりました。もう1つ入っていた部活はホームメイキング部で、毎週金曜日にいろいろなお菓子を作っていました。文化祭では自分たちが作ったお菓子を売って、集まったお金を東日本大震災で被災された方々に寄付することができました。
 日本での8ヶ月間の毎日は忙しく過ごしました。日本人の気遣いや繊細さ、ルールをきちんと守るまじめさ、さまざまなことを体験できてよかったと思っています。貴重な経験をさせてくれた皆さん、優しくしてくれた同級生や友達、家族の一員にしてくれたホストファミリーに感謝しています。子供だった私は日本に留学ができたことで少し大人になれた気がします。

 

(ズヴォドニィ・ヴィヴィエン)
 
 

Web editorial office in Donau 4 Seasons.