私は留学に来て初めて日本の祭りを経験して、それ以来すっかり祭りの虜になってしまいました。実は、だいぶ前から神道や様々な伝統儀礼に興味を持っていて、本の中で知った不思議で美しい世界を実際に自分の目で見るのを楽しみにしていました。
 この夢は2013年10月のある綺麗に晴れた水曜日に叶いました。待ちに待った人生で初めて、日本の祭りである「時代祭」を見に行くことができました。その時のわくわくして落ち着いていられなかったことを思い出すと、今でも笑みがこぼれます。でも、これまで経験してきたいろいろな祭りを少し振り返ってみると、「時代祭」は華やかで印象的ではありましたが、それ以降に訪ねた深い宗教的な意味を持つ祭礼ほどの魅力はなかったと思います。
 神様の降臨を告げるホラ貝の音。空間を清める線香の香り。神様に供える白い御幣。最初はこのような様々な道具の意義はおろか名前さえさっぱり分からずに、ただ視覚、聴覚、嗅覚だけで体感した神秘的な雰囲気に呑み込まれてしまいました。「巫女さんはあの枝を一体何のために振っているのだろうか?」、「あの人々が担いで運んでいる箱の中には何が入っているのだろうか?」などと考えた記憶があります。今ではもう榊の枝と神輿の役割を知っていますが、神話と民俗学の授業でこのような知識を身につける前にも、祭りで見たり聞いたり経験したりしたことの重要性、そのうまく言葉にできない感覚に圧倒されました。「ああ、神道の祭りはこういうものなんだ」と理解できたような気がしました。やっぱりこれも、他の数多くの文化的な要素と同様に、実際に行ってみないと分からないことの一つです。
 大阪に留学することができたのは、何よりもありがたいことだと思っています。祭り好きな私にとって、日本三大祭に数えられる祇園祭や天神祭もここ、関西で開催されるのはとても嬉しいのです。それに、長い歴史を持つ京都と奈良も簡単に行ける距離にあり、数えきれないほどの神社とお寺を訪れることができます。
 奈良といえば、今までで最も強く心に残ったのは春日大社の「春日若宮おん祭」です。夜12時から始まる行事は街の光が差し込まない真っ暗になった公園の中で行われ、まるで神様が本当に人間の世界に降臨してきたような、厳かな雰囲気を漂わせています。その夜の魅力といったら、鳥肌が立つほどでした。
 大阪から少し離れた場所でも思い出深い1日を過ごしたことがあります。2013年の春に、姫路で20年に1度しか執り行われない「三ツ山大祭」を見に行く機会がありました。そして、今年の雛祭りには、和歌山の海辺に面した淡島神社の「雛流し神事」に参加しました。地元の人々とともに神輿を担いだのは一生忘れられない経験になりました。
 最後に、私が最も大事に思っている町、大阪。神話の先生のおかげで、関西以外の地方ではほとんど知られておらず、地元の人でさえもあまり知らないような祭りに参加できる機会が何回かありました。その一つは堺市の「やっさいほっさい」と呼ばれる火渡り行事でした。屋台が三つしかなかったことは、祭りが小さい証拠とも言えるでしょう。けれど、人が少なかったにもかかわらず、いや、もしかしたらだからこそ、次第に消えていく炎を見つめながら気分が高揚し、参加者の間に微妙な一体感が生まれた気がしました。そして、できるなんて思ってもいなかった経験もしました。列に並んでいた人々に加わり、ドキドキしながら残り火の上を渡ったのです。その夜は、地域的で小規模な祭りの魅力と素晴らしさを決して忘れてはならないと実感しました。
 大阪天満宮の「うそ替え神事」に行ったときも、同じような感想を持ちました。皆さんはこの行事をご存知でしょうか。「うそ替え神事」の目的は、過去1年間についたうその穢れを祓い、うそを誠に替えることです。流れは次の通りです。まず、本殿横に並び、無料で配られる、神事に必要なお守りが入った小さい紙袋を手に入れます。太鼓が打ち鳴らされたら、ぐるぐる回り始め、「替えましょう、替えましょう」と言いながら、袋を周りの人々と何度も交換していきます。実は、残念なことに、私が天満宮に着いたとき、お守りの配布はすでに締め切られていたので、実際には神事に参加できなかったのですが、それでも嬉しく、記憶に残る日になりました。賑やかな人ごみを回りながら、老若男女の笑顔を見て、その楽しさを感じることができたのです。知らない人同士なのに、心の中に同じ目的を抱いていることで、わずかな時間の間につながりができるのは素晴らしいと思い、感動しました。また、なぜか多くの人は私とお守りを交換したがっていたので、楽しい気持ちになりました。
 最近、「私はなぜこんなに祭りにハマっているのだろうか」とたまに考え込みます。それは、やはり祭りには魔力のようなものがあるからだと思います。
 普段はあまり活気のない場所でも、祭りになるとたくさんの人で賑わい、別のところのように思えます。地元の人であれ観光客であれ、日常と異なる精神的状態になり、普段見えない顔が見えてきます。これからも熱心に日本全国のいろいろな祭礼を訪れ、素敵な思い出をたくさん作りたいと思っています。
 そして、祭りの魅力を他の人にも感じてもらうことができれば嬉しいです。

(バーリント・ドロッチャ ELTE日本学科)