あっという間の3年間。駆け抜けるように進んだ日々で見つけた「 初めて」について紹介しようと思う。
 最初に、1年目についてである。この年は,今までの人生の中で,経験したことのないようなことだらけで新鮮な1年間であった。まず、初めての1人暮らしである。生まれてから一度も故郷「香川県」を出て暮らしたことがなかった私が,初めての1人暮らしを外国ですることになるなんて思ってもみなかった。大学時代の友人が「1人暮らしは気楽でいいぞ」なんて言っていたが、外国ではそうはいかない。食事・洗濯・そうじなどやらなければならないことが山ほどある。日々の生活の中で、仕事と両立することは非常に大変だ。両親共働きだった我が家の母親や私の妻は、何も言わずにこれらをこなしていた。到底かないっこない・・・。女性の偉大さを感じられた1年だった。
 次に,ブタペスト日本人学校での仕事である。初めて2年生を担任することになった。とてもかわいい2年生たちに囲まれて、非常に楽しい1年間を過ごすことができた。叱ったり、笑ったり、遊んだりとたくさんの思い出ができた。お別れすることになった子どもたちもたくさんいたけれど、悲しむだけではなく,新たな旅立ちを応援することもできた。また、いろいろな場所から来ている子どもたちや先生方と話ができたこともよい経験になった。習慣や言葉の違いを楽しみながら過ごせた1年間だった。  最後に、「子どもの誕生」である。ブダペストブタペスト日本人学校に赴任が決まった時に、子どもができたことも知らされた。大きな喜びとともに不安がよぎった。それは、妻や子どもと離れて1年間暮らさなければならなくなることを意味していたからだ。しかし、無理を言って帰国させてもらった際には出産に立ち会えたし、パソコンやスマートフォンを通じて妻や子どもの顔を見ながら話をすることもでき、不安や寂しさも乗り越えていくことができた。
 次に、2年目の大きな出来事は,妻や子どもとの生活である。4月にリストフェレンツ空港で妻と子どもを迎えた。約8カ月ぶりの再会。娘は当然寝ていたが、無事にハンガリーで2人を迎えられたことが本当にうれしかった。妻と日々成長していく娘との生活は、大変楽しく、ハンガリーでの生活をより充実したものにしてくれた。
 最後に、3年目についてである。今年度は一番経験がある3年目教員の1人として仕事に取り組んだ。ついこの前までは、先輩の先生方に教えてもらいながらしていたことを今度は伝える立場になってしまった。元来、人にわかりやすく伝えることが苦手な私が上手に伝えられるだろうかと心配しながら仕事をしてきた。幸い、他の先生方の助けを得ながら、何とかここまでがんばってこられたように思う。やはり、人間1人では何もできない。たくさんの人と協働することで、できたときの喜びや達成感は何倍にもなる。そんなことを改めて感じた1年間であった。
 ハンガリーに来た3年間でたくさんの人と出会い、たくさんの人とお別れしてきた。そのたびに、新たな気づきがあったり、別れを惜しみながらも悲しみや喜びを共有したりすることができた。その一つひとつが、かけがえのない思い出として今の私の心の中に深く刻まれている。ここで出会った思い出を胸に、また新たな一歩を進んでいこうと思う。
(おおくぼ・ゆうじ ブタペスト日本人学校勤務)