ハンガリーに来て、早3年目を迎えています。2009年9月からマスターコースのピアノ科に在籍することになりました。これまでの2年間は、パートタイム生として週1度の貴重なレッスンの他に、チェロやクラリネットの伴奏、ハンガリー春の音楽祭「日本の日」に20絃箏奏者とコラボ出演や、日本語を学ぶハンガリー人のお友達との交流など、色々な経験をしました。とくに日本人の子供達にピアノを教える仕事をさせて貰った2年間は、逆に自分自身が教わる事が多かったですし、自分の音楽を改めて見つめ直す大切な時間でもありました。その他にはオペラやコンサートに足を運び、特にハンガリーのオペレッタ・ミュージカルにはとても魅力を感じ、今も良く通っています。異国での一人生活は、言語をはじめ文化や人種の違いなど、時には辛いことももちろんあります。
 生活面ではハンガリー語が以前より話せる様になり、例えばレストランでちょっとしたたわいもないやり取りを出来る様になったり、お買い物の時はハンガリー語だけを使ってみたり、隣人のおばあさん達との会話を楽しんだり、心が温かくなる瞬間が増えた様に思います。ようやく海外生活にも慣れ、心にもゆとりが出来、このヨーロッパの街並み、空気や時間の流れ・・・日本では感じる事の出来ないこの空間を、毎日肌で感じながら周りを見渡す事が出来る様になった気がします。それと同時に、日本という国や日本人としての自分というものをとても強く感じる日々でもあります。音楽観にしても、価値観にしても、食生活にしても、日本を飛び出して初めて知った出来事も沢山ありました。
 これから先、より沢山の音楽に触れられる事や、沢山の人との出会いなど、音楽が結び付けてくれる出来事を大切にしたいと思っています。そしていつの日か日本へ戻り、私の原点である札幌の音楽発展の為に、微力ながらも貢献する事が出来たら、と思っています。決して一人だけの力では開けなかったこの道を、こうして今歩んでいられることに感謝しています。