補習校に通い始めて2年が経とうとしています。
 初めは、普段100%ハンガリー文化の中にいる我が子が、日本語に興味をもってくれるのか、抵抗はないのかなど、いろいろと考えてしまい、補習校やその他の日本語クラブなどに入る事さえ躊躇していました。そして一番の理由として、私自身が毎週末に連れて行く事ができるのかという事も課題の一つでした。
 ですが、本人に「行って見たい?日本語や日本の事も知ってみたい?」と聞いたところ、幼いながらも「行って見たいよ。日本の事も知ってみたいよ」と言う返事が返ってきましので、これは行かせなくてはという思いになり、補習校に通う事を決めました。
通い始めてみると同じ環境の中に居るお友達と出会えた事は、彼の中でも衝撃的だったようで、その後の自身の生活が変化していきました。それまでは、二重国籍に生まれてきた自分という感覚がよくわからなくて、時には子供なりに迷いがあったようです。それが補習校に通う事によって変化があり、自分自身をどんどん理解して成長している彼を見ると嬉しくなります。補習校に通う事で、日本語がすごく出来ているかと言うと決してそうではなく、メインはハンガリーの環境なのでハンガリーの学校の課題などもこなしつつの日本語の課題をやれる事をやっています。
 本来なら両方こなしていかなくてはいけないのかもしれませんが実際に難しい部分もあり、全てをこなせないのが現状です。一時は強制して日本語の課題をする時もありましたが、あまりよい結果は得られなかったので、現在は自主的にやっていけるような方向で話をしたりしています。数年後は、そうなって欲しいという私の願望もありますし。
数年前まではハンガリー語で話してくる我が子に、私も、ついついハンガリー語で答えてみたり日本語で答えて見たりと、どっちつ かずな生活が続いていましたが、最近では日本語での会話も成り立ってきて、流暢とは言えませんが、自分の言いたい事を日本語で長く伝えられる様にもなってきて、だいぶ安定してきたなと感心しています。「もっと日本語を勉強させないと」と焦った時期もありますが、今は彼が日本語や日本の文化などを「もっと知りたい・やりたいと」思ってくれるような環境を作ってあげたほうが彼にあっているようで、そういう環境を与えられるよう心がけています。
 例えば、小学校に上ると同時に始めた「空手」も、その一つです。始めたきっかけは日本にいる従兄弟がやって、こちらにも同じ道場があり通える距離にあった事からですが、ハンガリー人の師範からも日本人という立場でも彼を扱ってくれていて道場の皆さんが日本語を使っている部分(空手の型名や数え方、礼儀作法など)を、彼が日本語の発音で皆さんに教える役割を与えてくださります。そういった事から責任感や日本語を学ぶ意味というものを理解し自覚を持ちつつあるというのは、親として本当に嬉しい限りです。
 一年に一度ですが、日本から師範が来ハンされて指導をされる際にも、師範の言っている事を誰に頼まれたわけでもなく通訳している我が子を見ると、二重国籍という環境が活かされている瞬間を感じる事が出来ますし、私から見れば我が子ながら羨ましく思います。
 こういった場面が増えていくといいなと私は思っています。その為にも唯一彼が日本を感じ・学べる環境を与えて下さっている補習校が、今では欠かせないものとなってきました。幸い本人も、補習校に行くことが楽しいと言って、金曜日の夜には「明日だよね?補習校。明日は、○○ちゃんや○○君にも会えるな〜」と同じ環境の友達に会えるのも嬉しいようです。
 先日、年度末に行なわれる学習発表会があり、彼のクラスは劇を披露してくれました。前もって頂いていた台詞を、本番の1週間前まで覚えられず、先生が短く台詞を作ってくれました。台詞が短くなった事がショックだったらしく、その日から本番まで短くなった台詞ではなく、元の台詞で自主的に覚えはじめました。
 もちろん彼がそうしたいのならばと思い、私も時間を作って一緒に練習をしました。結果彼は、発表会当日、すべての台詞を言う事ができました。私もびっくりしましたが先生もびっくりして「どうやったんですか?」と聞いてくれた程、褒めてくれました。理由はただ一つ、彼が自主的にやりたいと思い、それが実践に繋がっただけの話なのですよね。その時私は、やりたいと思わせる環境を作ってあげるのが大事なんだと感じましたし、今までの事を反省しました。周りのお友達と比べがちですが、実際本人がそうしたいと思ってくれないと実践にも繋がらないのだと改めて考えさせられました。
 今までもこれからも、本人が両国の言葉も文化も、なるべく良い状態で学んで身に付けられるようにサポートしていけたらと思います。ハンガリーの学校の友達が週末遊べるところ、彼らは週末半日を日本語の学習に費やしている事に対して、私の周りのハンガリー人や学校の先生からは、批判的な声もあります。ですが本人が行きたいと言っている限り、私は補習校に通わせたいと思いますし、それまで身についたものが彼の人生に有効的になるようサポートし続けたいと思っています。
(くわな・かずえ)