我が家はハンガリーで飼い始めたネコちゃん2匹(ヤマトとムサシ)を日本へ輸入しましたが、結構大変でした。その体験談がこれからペットを持ち帰る方々の参考に少しでもなればと思い以下の通りまとめました。但し、犬ではなくネコであったこと、当方の誤解や記憶違いもあるかもしれず、あくまでも参考として読んで頂ければと思います。

 ハンガリーからネコを日本へ持ち込むのには、細心の注意を払う必要があります。ざっくり言えば、「狂犬病予防注射と血液検査をきちんとやっていれば、成田空港で留め置かれず(最悪180日間)短時間で検疫クリアーとなります。但し、関連書類作成には細心の注意が必要です」。
 ペットの輸入については、農林水産省動物検疫所の以下ホームページ
http://www.maff.go.jp/aqs/animal/dog/import-index.html
http://www.maff.go.jp/aqs/animal/dog/import-other.html
に詳細がありますが、あまりにも詳しすぎて5回位熟読しないと全体像が見えないので忍耐が必要です。

以下、項目毎に注意点やコメントを記します。

1.獣医
先ず英語が通じることが重要で、日本へのペット輸出経験があればなおベターです。

2.マイクロチップ
これは早い段階で獣医により必ず埋め込まれますので、特にこちらから依頼する必要ありません。

3.EUパスポート
これも、ほぼ自動的に獣医により作成されます。基本的にはEU域内のネコの移動に必要です。成田空港の動物検疫所で見せる必要はありませんが、ブダペスト空港でネコをチェックインする際見せる必要ありました。我が家はフランクフルト経由だったのでEU内移動となることで見られたのかもしれず、もし中東経由等でEU内を経由しない場合には見せる必要はなかったのかもしれませんが、この点については不明です。いずれにしてもEUパスポートには予防注射やマイクロチップの記録が記入されているので日本到着まで携帯された方が良いでしょう。

4.狂犬病予防注射
大変重要なポイントです。日本へ輸入するには「マイクロチップ埋め込み後2回以上」狂犬病注射を行う必要があります。また、常に有効期限内に次の予防注射を行う必要があります。日本側で必要な書類に予防注射の有効免疫期間(有効期限)を書く欄がありますが、ここで言う「予防注射の有効期限」は薬メーカーが保証する期間(我が家のケースでは、ワクチンの箱に入っているハンガリー語の説明書に3年と記載されていました)であり、ハンガリー国で要求される接種間隔(確か1年だと思います)とは違うと言う点が重要になります。我が家の場合、基本的には1年以内に接種させていましたが、一度だけ1.5年間隔が空いた接種があり、その時期に行った血液検査が無効になるかと大いに焦りました(成田に係留だ!と超パニック)が、調査の結果3年以内だったので事なきを得ました。

5.血液検査(狂犬病の抗体価の確認)
これも大変重要なポイントで、下手をすると成田空港係留となります。血液検査はネコが狂犬病に掛かっていないことを数字で示すもので、農林水産大臣が指定する検査機関で行う必要があります。日本への輸出経験がある獣医であれば、採取した血液を指定検査機関(我が家の場合、ドイツの検査機関)へ送ってくれますが、心配であれば以下のリンクで当該検査機関を確認ください。
http://www.maff.go.jp/aqs/animal/dog/lab.html
 血液検査の数字が問題なくても、「潜伏期間があるかもしれないことから、180日間様子を見て確かに発症しないことを確認する必要がある」と言うのが大変重要です。つまり、帰国直前に血液検査を行って結果OKでも、それから180日間は日本へ輸入できません。従って、ハンガリーにネコを置いて本人は帰るか、持ち帰って成田空港で留め置きされるかの選択となります。
 一緒に持ち帰りたい場合には、帰国の180日以上前に血液検査を行う必要があります。さらに、最初の血液検査の有効期間が2年なので、これを過ぎるともう一度(2回目)血液検査を行う必要があります。ここで重要なのは、「2回目の血液検査後は180日待つ必要なく」、結果がOKであれば即日本へ持ちこめます。つまり、1回目の血液検査から180日以上経過しておりネコが狂犬病でないことは確実であり、2回目の結果がOKであることは、潜伏期間を待つまでもなく、確実に狂犬病でないと言えるからです。我が家の場合はこのケースでした。ここで重要なのは、狂犬病の予防注射を定期的にきちんと打っていることが前提になります。つまり、予防注射の有効期限が切れてしまうと、その後僅かの間に狂犬病に罹患する恐れが(理論的に)あり、いくらその後に予防接種をきちんと再開しても、予防注射には治癒能力はないことから、罹患した状態が続く恐れがあるからです。

6.日本側輸入手続き
先ずは、ANIPAS(http://www.maff.go.jp/aqs/tetuzuki/system/49.html)と呼ばれる電子申請を使い、インターネットで輸入の届出を行います。受理が確認されたら、ANIPASで輸入申請手続きを行うことになります。輸入の届出は「帰国予定日から40日以前に行う」ことに注意が必要です。また、輸入届出時に記載した帰国予定日の前倒し(早めること)は原則できないので(遅らせることは変更届けで出来る)、輸入届出時に帰国予定日が明確でない場合には若干早めの日付で届出を行い、後日変更届出で確実な帰国日を出すことになります。我が家の場合、一日早くなったのですが、輸入の届出を60日前くらいに余裕を持って行ったので許してもらいました。輸入の届出に続く輸入申請手続きがきちんと確認されると申請受理書が発行されます。これは、成田空港の動物検疫所のみならずブダペスト空港でネコをチェックインする際にも見せますので、常に携帯が必要です。
 この申請受理書に加え、ネコの輸入に必要な書類は、本人が書く書類Form A、ハンガリーの獣医に書いてもらう書類 Form C(ドラフトは当方にて作成しました)、血液検査結果(オリジナル)となります。
Form A : http://www.maff.go.jp/aqs/animal/dog/pdf/CertificateA041126.pdf
Form C :http://www.maff.go.jp/aqs/animal/dog/pdf/certificatec100415.pdf
Form A, Form C はハンガリー当局(と言っても指定の動物病院であり、掛かりつけの獣医さんが教えてくれるはずです)でサインとスタンプが必要となります。ここで重要なのは、Form A, Form Cのドラフトが完成したら、動物検疫所にメール送付し、内容を確認して貰うことです。動物検疫所は先に提出した事前届出・輸入申請手続きの内容とForm A, Cの内容が合致するかどうかチェックしてくれます。(我が家の場合、2箇所訂正がありました)当局にサインとスタンプを貰ってからでは修正できないのでこれは大変助かります。
 また、当局のサインとスタンプ押印済みのForm A, CをPDFにて動物検疫所へ送付し、内容に問題ないことを重ねて確認しました。これで最大のハードルはクリアーです。この動物検疫所との確認作業が成田空港でのスムーズな検査に繋がるので大変重要です。

7.ハンガリー側ファイナルチェック(臨床検査)
Form Cでは獣医が輸出前にネコの健康状態を最終確認の上サインし、その後当局に書類を持ち込み(Form Aとともに)ますが、動物検疫所ホームページ上ではその時期を「出発2日以内」推奨としています。当局からすんなりサインとスタンプが貰えなかったらどうしようと心配していたのですが、動物検疫所とのやりとりで出発日「10日前でもOK」、つまり、獣医のファイナルチェックと当局サインとスタンプは帰国10日前でも良いとのメールが来て安心でした。実際には当局にて1時間ほどでサインとスタンプ押印が済みました(予測していなかった収入印紙を郵便局へ買いに行くこととなってしまいましたが)。

8.ブダペスト空港にて
空港のチェックインカウンターでは、申請受理書(成田動物検疫所発行)、EUパスポートを見せる必要があり、ペット追加料金70ユーロ(2013年3月末現在)を支払いました。なぜか、EUパスポートの予防接種記録等を注意深く見ていました。手荷物チェックのX線が気がかりでしたが、バッグからネコを取り出し、人間が抱いてゲートを通過、バッグのみX線チェックとなり、安心しました。

9.フライト及び機内にて
ネコを機内持ち込みできるのは、ルフトハンザとフィンエアーのみで、日本航空、全日空、BA等は動物専用貨物室に入れることになります(最新情報確認ください)。我が家はルフトハンザを選択し、手荷物として機内へ持ち込み、飛行中は前の座席の下におきました。水も餌も与えることはかわいそうですが出来ません。おしっこ対策として吸水シートをネコ用バックの中に敷きました。最初、みゃぁみゃぁ鳴いていましたが(エンジン音で他人には聞こえず)巡航中は結構寝ていたようです。
 気をつけることは、飛行機に乗せられるイヌ、ネコの頭数が限られていることです。我が家の場合、フランクフルト→成田間は大型機であった為2匹OKでしたが、ブダペスト→フランクフルト間は小型機であった為1匹と制限されました。従い、家族が2便に別れフランクフルトで合流せざるを得ませんでした。フライトを予約する際、十分ご留意ください。

10.成田空港にて
我が家は成田空港第一ターミナルに到着しました。チェックイン荷物受取場の端に動物検疫所があり、そこへ必要書類(申請受理書、Form A, Form C, 血液検査結果オリジナル)を提出します。もちろん、ネコも見せて、実際に別室でマイクロチップの読み取りを行います。事前に書類は送っていたこともあり、思いの外スムーズで、検疫OKとなるまで1時間も掛かりませんでした

11.まとめ
 ( 駐在中の注意点 )
○ マイクロチップ埋め込み及びEUパスポート作成
○ 薬メーカー保証有効期限内の狂犬病予防注射(2回以上)
○ 帰国日より180日以前の血液検査+検査結果入手
 (日本側必要手続き・書類)
○ 輸入の届出→輸入申請手続き→申請受理書入手
○ 成田空港動物検疫所での必要書類:申請受理書、Form A, Form C、血液検査結果
 (ハンガリー側準備)
○ Form A(本人書き込み)、Form C(獣医書き込み)作成
○ 出発10日前(動物検疫所に念押し確認されること推奨)から獣医のファイナルチェック(From C)
○ 出発10日前(念押し確認推奨)から当局へForm A Form Cを持ち込みサインとスタンプ入手

その後ネコちゃん達は東京の新しい棲家で平和に暮らしています。最初の2~3日は落ち着かない様子でしたが、今ではすっかり慣れて一日中寝ています。地球の裏側からはるばる移り住んだと思うと不思議な気がします。

追記:ハンガリー当局スタンプ・サイン済みのForm A, From C及び血液検査結果のコピーを「ドナウの四季」編集長盛田さんに手渡しておりますので、必要に応じ参考としてください。(個人情報取扱注意でお願いします。)

(さかなし・まさのり 丸紅)