日本からハンガリーに引っ越して早6年。あっという間に時間がたちました。私は生まれも育ちも日本です。父は日本の大学で働いて27年。私が生まれた町は、田舎のまた田舎。香川県の善通寺というところです。うどんと空海さんで有名な街です。大きな町と違って外国人はほとんどいなく、いてもみんなお互いに知り合いであるというぐらい小さな町です。
 私はハンガリー人ですが、日本語はハンガリー語よりも先に話し始めました。私がまだ幼稚園に通い始める前、まだ赤ちゃんで一人で遊んでいた時、重たい物を持ち上げる時いつも「よいしょ…よいしょ。」と言っていたので両親はどこで聞いたのかとびっくりしたそうです。
 幼稚園も小学校も中学校も日本人と一緒に通いました。はじめは聖母幼稚園に通い、そのあと市立の小学校、中学校に通いました。
 幼稚園の頃の私は自分が外国人であることを受け入れられなかったようです。幼稚園で自分の顔を書く時、金髪、青い目を描かずに、黒髪、黒目で自分を描きました。もちろん鏡を見れば自分はほかのみんなとは違うことはわかったはずなのですが…今思い返したらおかしいです。
 小学校の頃は、自分はみんなとは全然違うということを気にせずに生活を送っていましたが、大きくなるにつれて、それが気になるようになりました。考え方や習慣は同級生と全く同じだったのですが、自分の外見が気になり始めました。自分が金髪で背が高くて目が青いことに対し、コンプレックスを持つようになりました。そして、中学校2年生の時に、ハンガリーに引っ越して勉強すると決意しました。ハンガリー語は家で両親としか話していなかったので、ハンガリーに引っ越してからは勉強に追いつくのがすごく大変でした。
 ハンガリーの学校に通い始めて一番びっくりしたことは、学校の掃除が無いことでした。私は結構几帳面なので(O型はおおざっぱらしいのに)掃除が無いことをすごく不思議に思いました。ハンガリーの学校では日本の学校のように生徒一同で学校をきれいにするのではなく、掃除をしてくれるおばさんがいます。このためハンガリーではポイ捨てをする人が多いと思います。日本では自分で掃除をしないといけないので教室は汚さないように気をつけますが、ハンガリーでは誰かほかの人がしてくれるだろうと考える生徒が多いです。
 また、日本の学校は校則がすごく厳しいのに対し、ハンガリーでは何をしても怒られなかったので、「まだ怒られない…まだ怒られない」といつも驚きました。勉強の仕方もすごく違い、慣れるのに何年もかかりました。試験やテストに関しては、ハンガリーでは口頭試験が多く、今でも自分が言いたいことをハンガリー語でちゃんとした言葉で伝えるのは苦手です。日本では、部活などのため夕方遅くまで学校にいますが、ハンガリーの中学校、高校は遅くても4時頃終わります。中学生だった頃、夜遅くまで塾で勉強していたことを今思い返すと信じられません。
 また、運動会や学校の行事は日本ではいつも熱心に練習しますが、ハンガリーではほとんどしません。本番一発です。ハンガリーでは、運動会はいつも一発勝負です。
 よく、ハンガリーの友達に日本の何が一番恋しいかと聞かれます。いろいろあるけれど、たぶん一番恋しいのは和食です。いつも家で和食を食べていたので、ハンガリーの食べ物はそんなに好きではありません。でもこの問題はいつも私の父が日本から帰ってくる時や、広島の友達ただすさん(74歳)が解決してくれます!日本から尚樹せんべいや炒り子、スルメを送ってもらったときはすごく幸せです。
 ハンガリーに引っ越してからは、一度だけ日本に帰りました。自分が生まれ育った町がゴーストタウンになっていたのでびっくりしました。今はエルテの日本学科に通っています。副専攻は美術です。
 ハンガリーに住んでから、日本の良い点、悪い点がわかり、ハンガリーでは通常考えられないことが遠くにいるからこそもっとよく見えてきました。14年間の日本の生活で身につけたものを生かして今後の生活に役立てたいです。

(チェレシネーシ・アンナ)