私にとってハンガリーでの二年目の留学生活がスタートしました。
 まだ始まったばかりですが、一時帰国した日本から再びこの国に戻って来た時「あぁ帰ってきたなぁ」という感覚になりました。たった一年生活しただけですが、もうここは私の中で第二の故郷になっているのかもしれません。今年は去年出来なかったことなど新しい事にも積極的にチャレンジし、後悔なく終える一年にしたいと思っています。去年一年を振り返ると、一年目のこの時期は右も左も分からず、何もかもが新鮮で経験する全てが特別!といった感覚でした。
 昨年9月。初めて降り立ったハンガリーは、空気の澄んだ秋の気候で暑すぎず寒過ぎず、気候的にもとても過ごしやすかった記憶があります。まだ残暑も厳しく湿気の多いじめじめとした気候の日本を飛び出し移り住んだハンガリー。空気は軽く、天は明るく晴れ渡り、到着して初めて空気を吸った時、この地に歓迎されているかのような印象を受けて、清々しくなんだかとても嬉しい気分になり自分に合いそうだと感じました。
 街に繰り出し初めて見るこの街の景色も、私の目にキラキラと反射しました。思い描いていた通りのヨーロッパの街並みだったからです。古きよきを重んじ、ヨーロッパの歴史が目に浮かんでくるようなそんな街並みに感動しました。中でも一番深く感動したのは、ドナウ川沿いに夜景を見に行った時でした。この世の現実のものか!とドナウの夜景が美しすぎて私は夢を見ているのか起きているのかわからない衝動にかられたほどでした。今でも、何度何回見てもドナウの夜景には感動します。辛いことがあった時、物想いにふけりたい時、どんな時も私はこのドナウの夜景に励まされて一年を過ごしました。
 そんな夢見心地で始まった一年目ですが、いざ始まった毎日は目まぐるしく嵐のように一年が過ぎていきました。私は2人の先生に師事することとなったのですが、毎回レッスンの準備に追われ、夜にはオペラやコンサートに足を運んだりすることも多くあり、始めの半年は自分のペースや生活スタイルを作ることに苦労しました。オペラやコンサートはこちらでは学生という特権もありますが、質の高い音楽が日本では考えられない程安値で聴くことが出来るので本当に気軽に足を運べる環境であり、これも私にとって留学してよかったなぁと思う事の一つです。また、ハンガリーは隣国、オーストリア・ウィーンもバスや電車で3時間程とアクセスしやすい場所に位置していますので、どうしても聞きたかったコンサートがウィーンであった時、少し足を延ばしてウィーンまでコンサートを聴きに行きました。こういう事が気軽に出来、実行出来るのはヨーロッパに住んでいるならではだと思います。
 また、私はこの留学が海外で暮らす事も一人暮らしをする事も初めての経験だったのですが一年間暮らしてみて強く感じた事が「人は一人では生きられない」ということでした。初めてだらけの新生活。楽しいことも沢山ありましたが、時には困ったことや辛いこともありました。そんな時、私は幸運にも心をゆるして話をし、助けあえる友人に出会えました。時には共に音楽を作り、時には他愛もない話に花を咲かせ、互いに刺激し合い、分かち合い、そんなかけがえのない友人達と過ごした時間も私がこの留学で得た財産の一つだと思います。皆、音楽に真摯に向き合い日々精進しようとしている姿は私の活力にもなり本当に良い刺激を貰っています。
 今年もそんな恵まれた環境で勉強出来る事に感謝し、日々頑張っていきたいと思っています。